本研究室は,基本的に学生のやりたいことを尊重して,卒業研究などを進めていきます.下記は,2025年度現在に山口が行っている研究の一部を紹介するものです.
□ 氾濫災害VRの避難に関する検証および教育
① 氾濫災害VRの構築
本研究室では,氾濫災害VRを制作しました.
このVRは,氾濫災害を想定して,浸水深・流速・雨量・氾濫水の色・被災場所などを自由に変更できるものです.(建物データは,Unity Assetよりインポートしたものです.)これにより,氾濫災害を仮想空間に作り出し,災害時の状況下での人の避難特性を検証したり,防災教育を実施することが期待できます.

浸水深が大きくなっていく様子
② 車内で被災した場合の検証
氾濫災害の報道は,毎年のように目にしますが,報道の中で,車が氾濫した水に浸かっているシーンをみたことはないでしょうか?
高等専門学校では,在学中に自動車免許を取得する学生も多いですが,このような「車内」&「自然災害」を組み合わせた検証や教育も実施しています.

車内での被災
□ 一般住宅における火災の避難タイミングに関する検証
2016年に新潟県糸魚川市で発生した糸魚川駅北側での「糸魚川市大規模火災」や,2025年に大分県佐賀関で発生した大規模火災は,「現代都市であっても,町は燃えてしまう」ということを我々に突き付けています.
本研究室では,一般住宅における火災に着目し,避難タイミングについての検証を実施しています.
一般住宅火災VR
□ 実市街地や実際の建物データ(3次元データ)を用いた災害シミュレーションおよび防災教育
近年の情報技術の発達によって,スマートフォンなどでも3次元データを取得することが可能となっています.
そこで,本研究室では,スマートフォンや360°カメラなどで撮影した写真や動画などをVR空間に取り込み,実市街地で災害を疑似的に発生させ,災害シミュレーションや防災教育につなげています.
実在する建物(人と防災未来センター)と降水の表現
□ 群馬県における建設コンサルタントの実情と災害時の課題(2026年度~)
本校の位置する群馬県にも,建設コンサルタントは多く存在しますが,群馬県内においては大規模災害が長年にわたって発生しておらず,災害時の対応等に関しての蓄積が決して多くありません.
そこで,本研究室では,群馬県における建設コンサルタントへ質問紙調査(アンケート調査)および半構造化インタビュー等を通じて,群馬県における建設コンサルタントの実情や課題を明らかにしていきます.
なお,具体的な視点は,①群馬県内における災害 ②広域災害(3都道府県以上の被災) ③BCP/BCM(業務継続計画・業務継続マネジメント) です.
□ 「建設ケースメゾット」と「クロスロードゲーム」の融合とその効果について-高専生への適用-(2026年度~)
社会基盤の整備や管理について社会的要望が高度化,また災害や事故などの的確な対応が求められる一方で,人材の高齢化など,土木分野を取り囲む環境は厳しいものがあります.
ケースメゾットは,現実に生じる各種の問題に対し,対応力・思考力・判断力等を養う手法として,ビジネスの世界では昔から取り入れられています.現実に起こった事例をもとに作成された「ケース」をもとに,自らがその局面に身を置いたとすればどのように対処したかを真剣に考え(疑似体験),グループ討議,全体討議などを通じて考えを深め,そして新たな気づきを生むというものです.
一方で,防災分野においては,阪神・淡路大震災を契機として作られた「クロスロードゲーム」が,建設ケースメゾットと非常によく似た考えをもっています.クロスロードゲームは,「Yes」か「No」の2択で,カードに書かれた事例を自分の問題として考え,参加者同士が意見交換を行いながらゲームを進めていくというものです.
本研究室では,「建設ケースメゾット」と「クロスロードゲーム」を融合させた土木教育教材を作成し,それを高専生に適用することで,土木業界の理解の促進などにつながることを期待しています.
□ 高専防災減災コンテストへの参画(2026年度~)
高専では,毎年「高専防災減災コンテスト」を全国規模で開催されています.このコンテストに,2年次で行う「リサーチラボ入門」,また5年次で行う「卒業研究」からエントリーすることを考えています.
★ 本研究室での大事にしたいこと
・本研究室の主テーマは「防災」ですが,まちづくりをするときに「防災」は一つの要素にすぎません.例えば,「人々を災害から守る」という視点であれば,「ハザードマップで色がついているところから住民を別のところに移す」ことは,「防災」の視点からみると,非常にいい考えかもしれません.しかしながら,我々が都市に求める要素は,「安全安心」もそうですが,「住みやすさ」や「環境」,「景観」「文化」「教育」「交通の便利さ」など多岐にわたります.本研究室では,防災だけを考える「部分最適」ではなく,「全体最適」を考えられる学生を研究を通して教育することを目指します.